2015年2月27日金曜日

「おじいちゃんの声は金の鐘」

昨年の1月末に、テレビアニメ「サザエさん」で
波平さんの声を担当していた声優さんの訃報が報じられて
なんだか寂しい気持ちになりました。
昭和の親父の象徴のような波平さん。私にとっては雷親父のイメージでした。

しかし、サザエやカツオたちには威厳ある声で怒鳴っていた波平さんも
孫のタラちゃんにはやけに優しかったような。

そういえば、「ちびまる子ちゃん」のおじいちゃんおばあちゃんも、
「はなかっぱ」のおじいちゃんおばあちゃんも、
なんだかいい味出してるよな…。

私が子どもだった頃にはあんなに怒っていたうちの親も、孫には甘い。
なぜかしら?

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「おじいちゃんの声は金の鐘」(南日本新聞「南点」 平成26年2月28日掲載)

 
 島津日新公のいろは歌が、今人気の県民ヒーロー薩摩剣士隼人のパッケージでカルタになっている。平仮名が読めるようになった娘も隼人ファンの息子も、このカルタ遊びが大好きだ。平仮名が読めない息子は、読み札の絵と照らし合わせながら絵札を探している。もちろん、二人とも歌の意味は理解していない。今はまだ、「いにしえの道」を聞くだけだ(ちゃんと聞いているかもあやしいが)。しかし、カルタという遊びの中で、先人の教えを家族の声を介して聞くということに意味があるように思う。親しい人の声には文字情報以上の意味があるからだ。

 
 「声のなかにはね、かならず心が含まれておる」と、「お母さんの声は金の鈴―椋鳩十の母子論―」(あすなろ書房)にある。椋鳩十氏の晩年の講演や資料をまとめたこの本で、椋氏は幼いころに祖母や母から聞いた昔話や寝物語が、自分の情緒を育ててくれたと語る。感動と共に心に残る声は「人生の危険からガーンと落ちようとしたときに」金の鈴のように鳴り響き、子どもの心をグッと抱きとめてくれるというのだ。ユーモアを交えながら心を育てることの大切さを説く椋氏の言葉の一語一語にやさしさがにじむ。まるで孫たちの行く末を案じる一人の祖父のように。

 
 私自身は祖父母と交流することは叶わなかったが、娘と息子は両家の祖父母が身近にあり、私たち夫婦が仕事の間、祖父母の家で過ごすことも多い。おじいちゃんおばあちゃんというのは、親ほど近すぎず他人ほど遠くない絶妙の距離感で子どもたちに人生の機微を教えてくれるありがたい存在だ。

 
情緒を育てるのが祖母や母の声だとすれば、道理を説いてくれるのが祖父や父の声とはいえないだろうか。人生の岐路で正しい方向へ導く金の鐘のように。日新公のいろは歌を、おそらく日新公本人の声で学んだ孫たちが、戦国時代いかに活躍したかという史実は歴史好きの方なら良く知る話。歴史好きのおじいちゃんおばあちゃんは、ぜひ孫たちに語っていただきたい。


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